PROJECT STORY

プロジェクト
ストーリー

容量市場の開設とメインオークション・長期脱炭素電源オークションの運営管理

日本の電力インフラを支える、
前例なき市場創設。

将来の電力を安定して届けるため、日本初の「供給力(発電することができる能力)を取引する市場」(容量市場)をゼロから創設するプロジェクト。OCCTOは市場管理者として、まず4年後の供給力を確保する「メインオークション」を2020年から開催。さらに2023年からは、脱炭素電源の新規投資を促し、原則20年の供給力を確保する世界初の「長期脱炭素電源オークション」を導入した。日本の電力インフラを支えるこの二つのオークションの運営を通じて、電力の安定供給に貢献するまでのプロセスを紐解く。

プロジェクトのポイント

日本初の「未来の供給力」を取引する市場を日本で初めて創設。制度設計からシステム開発、実際の運営に至るまで、新しい電力インフラの根幹をゼロから構築した。

メインオークションのほか、脱炭素電源の新規投資を促進する世界初のオークションも開設。2種のオークションを同時並行で運用する制度調整やシステム開発を実現した。

ストーリー

2017 電気の価値を再定義せよ。未来の発電所を守るための検討会

2016年の電力自由化により、電気の小売業に多様な企業が参入し、消費者の選択肢は拡大した。しかしその半面、電力の取引価格の低下により、電源の投資予見性が低下し、電源の新設・リプレースが十分になされず、中長期的な供給力不足になる可能性が生じてきた。「このままでは、未来の電力供給が不安定になる」。電気の価値とは今使える量だけではない。いざという時に発電できる能力そのものにも価値があるはずだ。この「能力」を取引する新市場創設に向け、検討会が始まった。そして約3年に及ぶ議論を経て、ついに制度の大枠が決定。初のオークション開催に向けて、プロジェクトは大きく動き出すこととなった。

20203 「設計」を「現場」へ。制度を現実にするための格闘

検討会において設計された制度という理論を、全国の電力事業者が現場で利用する実務に落とし込む。その困難さを象徴するのが、メインオークションに参加する電源を登録していく業務だった。全国から寄せられた数千件に及ぶ電源の情報を審査する中、「100年以上前の発電所で、当時の書類がない」という事態にも直面した。チームは事情を汲み取り、代替資料の提出を依頼するなど、臨機応変な対応で着実に市場開設への準備を進める。こうした作業を一つひとつクリアしていくことから、市場の立上げは始まった。

20206 開発1年、コロナ禍直撃。前例なきシステム開発の完遂

オークションの心臓部となる「容量市場システム」の初期開発は、約1年という驚異的な短納期で進められた。さらに運用開始直前、コロナ禍が直撃。全職員が初の在宅勤務を余儀なくされる中、複雑な仕様調整は困難を極めた。チームはWeb会議を内部用とベンダー用で複数立ち上げ、同時並行で開発会議を実施するなど、あらゆる工夫でこの難局を打開。限られた体制とスケジュールという制約を乗り越え、前例のない市場の基幹システムを無事、稼働させた。

20209 信念がプロジェクトを救う。「不要」と言われた機能

初回オークション後、その結果を受け、制度の見直しが行われた。しかし、システムは変更前の制度に最適化されており、改修は間に合わない。まさに絶体絶命の危機。その時、開発担当者が「万が一のため」と仕込んでいた機能により、奇跡的にこの変更に対応できた。開発当時、関係者には「そんなものは要らないだろう」とまで言われた機能だった。「(言った相手に)聞かせてあげたい」。チームの開発担当者は当時を振り返りこう語る。開発者の信念と先見の明が、プロジェクトを救った瞬間だった。

20239 機転が動かした世界初の市場。既存システムの応用

メインオークションに加え、さらに新たな市場が動き出す。脱炭素電源への新規投資を促し、原則20年の供給力を確保する「長期脱炭素電源オークション」だ。これは世界にも前例のない仕組みだが、オークション開始までに専用システムの開発は間に合わない。チームは機転を利かせ、既存のメインオークション用システムをうまく流用して乗り切るという判断を下した。この柔軟な対応と熱意によって2種のオークションの同時並行運用を実現し、世界初の市場取引が無事にスタートしたのだった。

20244 4年越しの「答え合わせ」。データだけでは裁けない、現場の事情

2020年の初回メインオークションから4年、ついに最初の実運用(実需給)が始まった。これは、4年前に落札された供給力が、本当に提供されているかを評価する「答え合わせ」の瞬間だ。このアセスメント(評価)は単なるデータ照合ではない。データ上は未達成でも、事業者から「発電所の運転制約で、どうしても出せなかった」といった申し立ても上がってくる。供給力確保の対価の支払いやペナルティに直結するため、OCCTOはこうした申し立てに対し、綿密な対処を進めていく。4年越しに始まった市場の運用は、現場の事情を深くヒアリングし、制度の趣旨と照らし合わせる、高度な判断の連続だった。こうした数々の調整を経て初年度の運用を無事に軌道に乗せ、市場は次年度以降も安定して稼働を続けている。

代表メンバーからのコメント

2017年に検討会が始まってから2020年の初回オークションを実施するまで、さらには2024年に初めての実需給が開始するまで、実に7年間以上をかけた長期プロジェクト。「将来の電力供給力を確保する」という仕組みを、この長い年月で0から生み出すことができたことに、大きな意義を感じています。想定していない対応も多くありましたが、メンバー全員の頑張りのおかげで、100点に近い仕事ができたと感じています。

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