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更新日:2021年5月7日

需給調整市場(三次調整力②)において市場分断となる影響を与えた広域機関システムの問題とその対応について

1.概要

 2021年4月より需給調整市場において三次調整力2の取引が開始され、地域間連系線を介した調整力の広域調達が開始されました。取引開始後の分析において北海道・本州間連系線での市場分断が継続的に発生していることが判明し、当機関にて原因究明調査を進めてきました。結果として、当機関で算定に利用している「広域機関システム」において設計上の不備があり、当該連系線に取引可能枠を設定ができる時間帯があるにも係わらず誤ってゼロと算定し設定していることが2021年4月15日に判明しました。
 2021年4月27日以降の取引分に関しては、「広域機関システム」を利用した算定を取りやめ手動設定することで、適切に取引可能量が設定できることを確認済みです。手動設定対応は改修が完了するまで継続実施いたします。

2.問題点 

 2021年度から需給調整市場を介して新たに三次調整力2の取引が開始され、日本卸電力取引所(JEPX)を介して受け渡しされる電力量取引とあわせて、地域間連系線の管理を行う新たな仕組みが必要となりました。そこで、当機関では業務規程124条の規定に基づき連系線を管理していることから、2019年10月から「広域機関システム」の改良開発を進めてきました。
 本改良開発では、全国の複数ある地域間連系線における需給調整市場システム(MMS:Market Management System)に対して、当機関から取引可能量を算定する機能開発を行いました。特に、北海道・本州間においては直流連系線が北本連系線および新北本連系線と2つあり、制御特性が大きく異なることから、制御制約に配慮した特殊な算定ロジックが必要となりました。2019年9月の制度設計専門会合において試算値として公表された時間前取引枠が新北本の運用容量以下であったことも踏まえて検討した結果、図1のように制御性の高い新北本に時間前確保枠を割り付けるとともに、新北本の設備停止時にも配慮し、北本総合と新北本のそれぞれでMMS運用可能量を算出し、小さい方を取引可能量として採用するロジックを搭載することとしました。

図1 北本連系線のMMS運用可能量算出のロジック

 

 しかしながら、2021年3月2日の制度設計専門会合で、北海道・本州間の時間前確保枠が順方向356MW、逆方向368MWとすることが了承され、新北本連系線の運用容量を超える量を設定することが決定されました。結果的に、全時間帯において「広域機関システム」に搭載した本ロジックを利用することで北海道・本州間の取引可能量がゼロと算出されることになりました。後日、取引へ与えた影響を確認したところ、4月1日~26日の期間における全商品ブロック数208に対して空容量があったにも係わらず、取引可能量をゼロと設定していたブロックがあったことが判明しました。
・順方向(北海道→東北向き) 166ブロック、逆方向(東北→北海道向き) 61ブロック

 

図2 取引可能量がゼロとなっている例

3.対応策

(1)実施済みの対応策
 2021年4月27日以降の受け渡し分に対しては、北海道・本州間の連系線の需給調整市場システム向けの取引可能量の算定において「広域機関システム」での算定結果の採用を取りやめ、日々手動で修正を行う対応を開始しており、その効果により、以下のように取引可能量が確保できております。

<実績:4/27~28受け渡し分における取引可能量>
・順方向(北海道→東北向き)16ブロック中、10ブロック(平均116MW)
・逆方向(東北→北海道向き)16ブロック中、12ブロック(平均124MW)

(2)今後の対応
 取引可能量の算定について、恒久対策としてのシステム改修の検討を進めているところです。
 また、今回の対応においては開発プロセスにおいて検討漏れがあったことから、今後は再発防止に向け、開発内容に対する確認体制や手順の見直し、市場運営への継続的な影響評価などの対応を図り、早期発見と対応強化を進めてまいります。

4.最後に

 この度は市場関係者の皆様には当機関において本不具合の発見から対応開始まで時間がかかりご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。

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